奏者のうら話

先日のメモリアル式は、非常に思い出深いものとなりました。

 

毎回、前日のお通夜までにリクエスト曲を伺い、

前日に準備、音作り、練習をして告別式で演奏するのですが…

その日は違っていました。

 

 

 

 

当日にご家族に曲確認のあいさつに行ったところ

「リクエストした曲は、これではないんですけど…」

 

申し訳なさそうに言われたのは、お孫さまからでした。

 

それは、3.11の大震災を受けて最近作られた、有名な歌手の曲。

お孫さまが、故人であるおじいさまとよく一緒に聴いてらしたそうです。

 

テレビで1、2回放映されただけで、楽譜はもちろんなく、

調べても最新すぎて、私の携帯ではダウンロードもできない曲でした。

 

 

 

 

 

実は、前日に発注を受けた段階では、曲名に手違いがあり、

私はそちらの曲を用意していました。

 

開式30分前で、楽譜も音源もないので、その曲と、

もう一曲(リクエスト「水戸黄門」でした)を弾かせていただく旨をお伝えして、

葬送の式にのぞみました。

 

 

 

 

 

そのまま式を終えても、何も支障はなかったかもしれません。

ご家族にもご了承をいただいていましたので。

 

ですが、できるだけお気持ち、思い入れに添いたく、

開式前に事務所に報告を兼ねて、連絡をしました。

 

 

 

 

そしてお式も滞りなく終わり、お別れの儀のとき。

一曲目の「水戸黄門」を弾いている私のところに。

 

 

 

 

なんと、どこで入手したのか、

奏者仲間さんが、その最新曲の楽譜を持って来てくださいました。

 

 

 

 

私はもうビックリして、でも次の瞬間には、

どのように演奏して差し上げようか、頭の中をめいっぱい回転させました。

 

そしてここはやはり自分にとって一番安心して聴いてもらえるピアノの音で。

「どうか、みんなの想いが、届きますように…!」

という気持ちで演奏しました。

 

もちろん全くの初見ですし、聴いたこともない曲でした。

シンプルな、とても美しい曲で、ミスもなく無事に終えられました。

ああいう時に出るアドレナリンの量とは、きっとすごいのでしょう。

こんなに集中したのも久しぶりでした。

 

 

 

涙ナミダのお孫さん方を見て、私も心うごかされ。

弾いてさしあげることができ、やっぱりよかったなと、思いました。

 

 

後で聞いたのですが、私の事務所への電話を受けてから、

奏者仲間さんが楽譜におこしてくださったそうです。

チームワークとは、大変にありがたく。すごいなと、思いました。

「クライアント(お客様)のために」を忘れず、音楽に真摯に取り組む。

そんな素敵な事務所です。

 

 

今後もいろいろに対応がかなう自分であるために、精進しないとです♪